札所8番・西善寺(せいぜんじ)
7番終して、一抹の不安がよぎる。先のお遍路さんがまた次の場所で同じように長々とお参りしていたら、やや困る。ところがこの人たちは車で移動していった。おそらく僕より先に8番に到着して、僕が到着するころには、きっといないだろと希望的観測をする。8番までは1.2 km、15分とちょっとで到着するだろう。巡礼古道はアップダウンがあるが、武甲山を見ながら、さらには小さな川を越えて、気持ちよく歩ける。川で子供たちが遊んでいたが、周囲を大人が囲むのはいかにも現代的な風景という感じだ。ここ横瀬にも家が増えてきて、30年前とはかなり風景が変わっているが、昔と同じように緑が濃く、田園風景が広がり、子供たちはすれ違うたびに「こんにちは」とあいさつをしてくれる。8番に行く道はずっと武甲山に向かって歩くので、気持ちが大きくなり気に入っている道のひとつだ。
途中「小松沢レジャー農園」に観光バスが結構止まっていた。8月だから家族連れも見られたが、最近はやりの外国人旅行者までは見られなかった。しかし秩父は東京からも2時間程度だし、メジャーな観光地に飽きた個人旅行者にはうってつけの場所だと思う。僕も海外に行ったときは、観光客が少ない田舎の道を歩くのが好きだった。今でも覚えているのはスロバキアのお城で、一応入場料をとるのだけど、簡単な説明書きのパンフレット以外、まとも説明用パネルもなく、あっても現地の言葉だけだった。それでもローカルな雰囲気が満載で、地域の人たちの生活が見えてくるし、なにより現地の人たちはとても親切だった。観光地化することにはいろんな議論があるが、王様のようにお客さんをおもてなしするより、友人のように迎えてくれるおもてなしのほうが僕は好きだ。
まもなく8番到着。7番で見かけた軽自動車があったので、ドキッとする。案の定7番で長時間お参りしていた二人組だった。最初からあきらめて先に納経帳をお願いし、境内のまだ緑でいっぱいのもみじを眺める。きっと秋には豪華な色になるのだろう。
二人組はすぐに終わってくれた。その後も他のグループが来たりしたが、空に黒い雲が現れ、みんな先を急いて行ってしまった。
とりあえずお経を読み上げ、8番終了。
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