札所30番・法雲寺(ほううんじ)
29番以降は長距離歩行となるので、歩くかバス・電車かをうまく選択したいとことだ。30番までは7.1 km。1 kmを約15分で歩くことを考えると2時間弱でこれまでの最長距離だ。お寺間の最長距離は18 kmなので、それに比べるとまだまだ優しいかもしれない。長尾根道に比べるとアスファルトの道を歩くので、距離が長くても歩きやすいことはある。
三峰の山を見ながら、チョコレートを口にいれ歩く。本当はゆっくり歩きたいと思っていたが、この日夕方に届くiPhone Xのことが頭にあって、早く終わって帰りたいなどと焦って歩く。周りの景色も目に入らないで事務的に早歩きとなる。後になって気づくがこうした歩き方は、何のためにもならない。つまり巡礼をしたという記憶があまり残らない。仏教でいう三毒のひとつ”欲”が心を支配した状態なのだろう。心の健やかさは常に自分で保つべきなのだろう。
29番を出発したのが11時50分。途中、秩父鉄道武州中川駅の近くにそば屋があるのでそちらで昼食を計画。「そば処あらかわ亭」というレストラン。ちょっと巡礼道を外れるのでGoogleマップで場所を確認。29番から30分弱で到着。ここまで歩いてきて他に巡礼者や観光客をあまり見かけなかったので、レストランも空いているだろうと勝手に推測。しかしお昼時は混雑していた。国道沿いで駅にも近いし、他に目立ったレストランも見当たらないため、ここに集中するのかもしれない。
とりあえずカウンターに席を確保して、そば定食でエネルギーを蓄える。この辺り(荒川地区)はそばの産地で、ちょうどこの時期は新そばが楽しめるので混雑しているのかもしれない。30分ほどの滞在で12時50分頃お店をでる。
そばの後は本格的な歩きに戻る。食べ終えた後にも関わらず高速で歩き出す。巡礼道はだんだん分かりにくくなって、あまりサインパネルも見かけなくなってきた。道に迷うことだけは避けたいので、Googleマップを確認しつつ歩くと国道140号に出てきた。果たして巡礼道なのかは不明だが、とにかく30番方向に歩く。
途中巡礼道っぽい雰囲気の道がでてきたので右折する。やはり国道はトラックが多く歩きは楽しめないから、ちょっとぐらい外れても雰囲気の良い道をあるきたい。下の写真の看板があるところを左折した。
で、とにかく進む。邪念に取りつかれているこの日はペースを上げることしか考えず、巡礼道かどうかは関係ない状態だったが、秩父鉄道白久駅の手前で巡礼道のサインを発見。自分はやはり巡礼道を歩いていたのかとやや感動した。ただこの辺も巡礼道とは見えない普通のアスファルトの道だった。いずれにしてもこの距離は地図を片手に歩くほうがよい。7 kmの距離を考えると迷ったら相当行ってしまうかもしれない。途中踏切をすぎて、少し歩くと右手に白久駅が確認できる。ここで1時半だったので相当なスピードで歩いたことになる。駅のところで左折。
白久は昔スケート場があって一周400メートルくらいの本格的なトラックがあった。小学生くらいから冬になると必ずここで遊んでいた。国体にでるような選手もここで練習していた。秩父っ子にとっては大事な思い出の場所だろう。今はスケート場の建物はすべて更地になって、すすきに覆われている。
すすきを見ながら登り坂をさらに10分ほど進む。結構きつい登り坂を終えると、ようやく現れるのが30番は山の中にあるお寺。
本堂ではようやく他の巡礼者を二人ほど見つけた。申し訳なかったが先に般若心経を読ませていただいて、ご朱印をもらって帰路につく。また10分ほど歩いて白久駅に戻る。帰りの電車は午後2時24分。駅には他に3人ほど待っている人がいたが、駅員さんは見当たらない。切符を買ってベンチでコーヒー。目の前にはお気に入りの景色が広がる。
前回の巡礼時は夏だったので、山の景色がもっと緑で、中央の赤が映えた。疲れた体を癒してくれた快適な景色だった。赤い橋は平和橋で、荒川をまたいでいる。反対側には国道140号線で、左に行くと三峰山、雁坂トンネル方面となる。こう見るとここからさらに険しい山が奥深く広がっている。昔の人はすべてからくこうした山を歩きで越えてきたのだ。と感慨にふけるが、この日僕の頭はiPhone Xに乗っ取られており、あまり景色を楽しむことはなかった。
この次の日、早歩きが災いしたのが、左の足首を痛め2週間ほど歩くのがつらかった。治ったと思ったら、また痛む。左足を保護しようとするから今度は右足が痛む。これは欲に取りつかれた人間が陥る苦しみの連鎖なのだと巡礼が教えてくれた。
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